を拝読しました。

ネットで勝つ情報リテラシー

本書はグリーの CSR 部門に所属し、ネットリテラシーについての公演活動などをおこなっている小木曽 健 氏の著書です。

本書の目的は

情報の裏を理解し、自分が発信する情報をコントロールしながら、「情報による攻撃」への反撃テクニックまでお伝えする「大人の情報リテラシー入門書」

ネットで勝つ情報リテラシー P.12

です。

本書は、 2 部から成っており、

第一部は、「人間にとって情報とはなにか」という、情報の正体についての確認を行うこと、

第二部は、情報を「発信」という点から考え、攻・守揃った、バランスの良い情報リテラシーを手に入れること、

を目的としています。

内容紹介

拡散される「フェイクニュース」「ステマ」「粘着」「炎上」。ネットはウソと悪意に満ちあふれ、気軽な投稿がたちまち炎上する危険な空間……ではありません。ウソを見破り、悪意をかわし、あなたの声を正しく届けるための超簡単テクニックがここにある! 情報の「正体」から炎上の鎮火術、粘着の上手な撃退法まで、講演回数2000超の「ネットの達人」が送る、ネットで「勝つ」ための情報受信・発信マニュアル決定版。

本書拾い読み

フェイクはネットだけのものではない

最後に、「フェイクニュース」という単語は、この数年でよく耳にするようになりましたが、これはネットだけに見られるものではない、という点に注意が必要です。

たとえば「オレオレ詐欺」は、リアルで起こっている事件ですよね。

善意も悪意も、ネットから生まれるわけではなく、リアルな人間から出発するものです。

ここを意識すると、ネットだけが「ウソと悪意に満ちあふれている」わけではないことがよく分かることだと思います。

それと同時に、

私達はネットよりもずっと昔から、自分が好ましいと感じる情報を選択し、不快な意見はしっかりと排除してきたのです。その都度、情報に対して「信じたい」「信じたくない」というタグづけ作業をしてきたとも言えるでしょう。

ネットで勝つ情報リテラシー P.108

というように、ずっと昔から「好ましい、意見、情報」を選択し「不快な意見、情報」は排除するという 情報の取捨選択を無意識にずっとおこなってきた ことは認識する必要がありそうです。

誰が得をするのか

「情報」の特性として、次の 3 つがあります。

  • 情報には、発信者の「個性・思い込み・偏り」が含まれる
  • 情報には必ず、発信者にとっての「動機・目的・メリット」がある
  • その情報が自分に「不利益」をもたらす場合は、隠蔽される
本書 P.29 を要約

「その情報によって、誰が得をするのか」というように、情報の裏について考えることが、情報を正しく理解するために必要です。

そして、「何を語るか、語らないか」を観察するによって、そのあたりが見えてくることがあります。

沈黙は金じゃない

本書では炎上や震災デマなどについて取り上げていますが、ネットには大多数の 意見しない人は存在しないとみなされる という性質があります。

なにか炎上が起きたとして、実際にそれに対して憤って行動を起こす人は、ほとんどいないんですね。

いちいちコメントを入れることも手間ですから、放っておく、というのがほとんどの人の対応だと思うのですが、 ネット上では一部の声が大きい人達だけが目立ち、その後ろにいる数十倍もの「どうでもいいと考えている人たち」の存在が見えない のですね。

それはそうです。

形跡がないのですから。

その背後にはさらに数十倍もの見えない人たち、「どうでもいい」と感じている人たちがいるのです。ですが・・・困ったことにネットの世界は「発言しない人」=ゼロカウント、「存在せず」と同じです。

ネットで勝つ情報リテラシー P.135

ということです。


厄介なことは、 反論しないでいることが同意したとみなされてしまう ということで、これはリアルとは相違があるところですね。

ですから、

場合によってはそれをしっかりと否定する「情報発信」が必要だということ。好むと好まざるとにかかわらず、反論する情報発信をしなければ「それを認めた」事になってしまう場合があるということ。

ネットで勝つ情報リテラシー P.136

というように、 反論する情報発信が重要 になるケースがあります。

否定しなければ肯定したことになるなんて、小学生レベルだと感じてしまうのですが、実際はそう見られないことがある、ということは心に留めておく必要がありますよね。

エビデンスが重要

本書の第一章では、情報の悪用法についても述べられていいます。

スッと出た言葉に対して、悪意を持って攻撃することは、実はとても簡単にできるんですよね。

いかにも揚げ足取り、という感じであっても、それっぽく見えてしまったりします。

そして、 情報が信頼できるかどうか、ソースとエビデンスが重要 であることは明白ですが、私たちは、やっかいなことに、エビデンスは軽視され、「気分」や「好き嫌い」というフィーリングが強く作用する、とうことに十分な注意が必要だと感じます。

人間は「嘘かもしれないけど面白いからOK」と感じたとたん、エビデンスを探すことをやめてしまう。

ネットで勝つ情報リテラシー P.108

というように、「嘘かもしれないけど面白いから OK 」という気持ちでシェアするという行為は、もう本当にそのあたりにゴロゴロ転がっている事例だと思います。

私たちは「その場の雰囲気」にとても弱いこともありますし、ネット上では「話題」「笑い」を提供して注目されたい、という動機が非常に強く働くため、この傾向が強くでますよね。

SNS ほど、その人の本質が出るものはない

人間は一人になると、無意識のうちにその人の本質・本性が出てしまうもの。だから本人も気をつけているつもりが、素の自分が滲み出てしまい、周りの人に「あれっ・・・」と思われてしまう。

ネットで勝つ情報リテラシー P.217

というように、 SNS ほど、その人の素が出るものはない、と私も感じていました。

某 SNS が「バカ発見器」と揶揄されることもありますが、その投稿が「不特定多数の人の目に触れる」ということがわかっていても、投稿を行うその瞬間は一人なんですよね。

「その人たちは今、目の前に」いるわけではない、ということが、人と対面しているときに感じる居心地の悪さといった心理的なブレーキが、ほとんどかからないですね。

一貫性を貫く

情報の達人とは、

日頃からエビデンスを重視し、一貫性を意識している人たちです。

ネットで勝つ情報リテラシー P.214

エビデンスを重視し、一貫性を意識して行動する 人たちです。

書いてしまうと、すごく当たり前のことですよね。

そして、

ダブルスタンダードがどれだけ恥ずかしいか、また意地を張って誤魔化せば、それがさらなるダブルスタンダードにつながることもよく知っています。だからこそ誤りを指摘され、その指摘が正しければ素直に謝ることもできるのです。

ネットで勝つ情報リテラシー P.214

ということでした。

誤りを指摘されれば、素直に認め正しい方向に向かうことができる。

しかし、 Q&A サイトなどでは、

  • 複数テーマが絡み合っていて
  • 議論のベースとなる統計や数値も、双方が都合の良いデータを選り好みして引用し
  • 最後は感情の伴った殴り合いになる

というテーマがとても多いそうです。

残念ながら まともな議論ができない、未成熟な社会 と言われても仕方がないですよね。

私も議論は苦手ですけどね。

しっかりとしたエビデンスのある証拠を示されれば、誤りを認める気持ちは忘れずに、感情的に成っているなと思えばクールダウンし、より良いものを構築していく、という気持ちは忘れずに持っていたいです。


は「大人の情報リテラシー入門書」という目的を十分にはたす、良い内容であると感じました。

当時から IT 系に入る人ならば誰もが知っている「任天堂の倒し方」について、何がどうだったのか、どう対処すべきだったのか、ということにも言及していて、当時を知る人は目にしてみるといいと思います。